6月22日 北山忍先生 講演会「社会的自己と社会的脳:文化神経科学の視点」
2009.6.15
関西学院大学イニシアティブ・学術フロンティア推進事業「先端技術による応用心理科学研究」共催の学術講演会を開催します。参加は無料、申し込みは不要です。
タイトル:社会的自己と社会的脳:文化神経科学の視点
講 師:北山 忍 先生(ミシガン大学心理学部教授)
日 時:2009年6月22日(月) 16:50~18:20
場 所:関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 大学図書館ホール
司会・プロジェクト代表:八木昭宏(関西学院大学文学部総合心理科学科教授)
【講師紹介】
京都大学文学部心理学科卒、同修士課程修了後、ミシガン大学心理学部に留学しPh.D.を取得。オレゴン大学心理学部助教授・準教授,京都大学総合人間学部助教授をへて、現在、ミシガン大学心理学部教授およびミシガン大学文化と認識プログラム所長。
一貫して、文化と心理プロセスの関連についての研究に携わる。Personality and Social Psychology Bulletinの編集主幹を務めるかたわら、文化研究に脳指標を取り入れるプロジェクトを進めている。今年9月よりミシガン大学文化・心・脳研究センターの所長に。
【講演内容】
従来、社会・行動科学の諸領域では、人間の心を自律した計算装置であるとしてきた。しかし、社会・文化心理学、進化心理学、神経科学といった諸分野の近年の発展に伴い、人の心、そして、心の背後にある神経メカニズムは、生物学的に準備されていると同時に、文化と呼ばれるシンボリックな環境に主体的に関わることを通じて形作られ、完結する存在であると強く示唆されてきている。過去20年、文化心理学者は、認知・社会心理学のさまざまな実験課題を用いて、この仮説を検討してきたが、近年はこれに脳プロセスの電気生理指標とイメージング指標が加わってきている。本講演では、これらの研究の理論的背景を概説した上で、近年の実証研究を概観し、人間の主体(自己)、並びに主体を構成する認知や感情の神経機構は、社会・文化的に条件付けられ、その結果、社会・文化的環境の違いに対応して多用な様相を示すことを示す。ここでの議論を通じて、人の心とは何かという問いに対するより包括的な視点を提示し、行動科学の今後への意味合いを考察する。
【参考文献】
Ishii, K., Kobayashi, Y., & Kitayama, S. (in press). Interdependence modulates the brain response to word-voice incongruity. Social, Cognition, and Affective Neuroscience.
Kitayama, S., Park, H., Servincer, A. T., Karasawa, M., & Uskul, A. K. (in press). A cultural task analysis of implicit independence: Comparing North America, West Europe, and East Asia. Journal of Personality and Social Psychology.
Markus, H., & Kitayama, S. (1991). Culture and the self: Implications for cognition, emotion, and motivation. Psychological Review, 98, 224-253.
Uskul, A. K., Kitayama, S., & Nisbett, R. E. (2008). Eco-cultural basis of cognition: Farmers and fishermen are more holistic than herders. Proceedings of the National Academy of Science, 105, 8552-8556.