私たちは家から学校や職場までの道を覚え，一度道を覚えてしまえば，迷うことなく目的地に到着できます。このようなナビゲーションは，ヒトだけでなくあらゆる動物が日常的におこなっています。実際の地図や覚えた道の記憶に従って目的地にたどり着くには，自分が今どこにいるのか，目的地はどの方向にあるのか，どこの角を曲がらなければならないのかなど，実に様々な情報が必要です。このようなナビゲーションに必要な情報は，どのように処理されているのでしょうか？脳の中には，ある場所を通ったときにだけ活動する神経細胞や，頭がある方向を向いたときにだけ活動する神経細胞など，空間的な情報の変化に応答を示す神経細胞があります。このような神経細胞の持つ情報を組み合わせることでナビゲーションが可能だと考えられています。私は，空間的な情報を持つ神経細胞の働きに関心を持ち，ナビゲーションに関わる脳の機能について研究を行っています。