3月4日 木村健太先生講演会「コントロール可能性に基づく行動・生理活動の調節」
2011.2.25
※このプログラムは終了しました
以下のように大学院GP講演会を開催します。対象は総合心理科学科の院生・研究員・教員です(学部生も聴講可能です)。それ以外の方で参加をご希望される場合は、大学院GP事務局(直通0798-54-6944 内線:42625)までご連絡ください。
タイトル:コントロール可能性に基づく行動・生理活動の調節
講演者 :名古屋大学大学院環境学研究科 木村健太先生
日 時:3月4日 10:00-11:30
場 所:F号館103号教室
要 旨:
ヒトを含む生物は、不断に変化する環境をモニタリングし、適切に行動・生理活動を調節することで生存している。
環境のモニタリングの中でも、特に、個体が与えられた状況をどれだけコントロールできるかを示すコントロール可能性が重要な要因であることが知られている。例えば、われわれは日々の生活で仕事、大学のレポートといった対処すべき課題を与えられたとき、自分の能力でその課題にどれだけ対処できるかを評価し、課題に対するリソース配分を調節すると考えられる。このような状況の評価は、どのような認知的プロセスにより可能となり、どのような経路で生理活動に影響を与えるのか?本講演では、コントロール可能性に基づく行動、生理活動の調節機構について検討した一連の実験結果を報告することで、環境のモニタリングによる生物の適応メカニズムについて議論する。
私達をとりまく環境は常に変化している。その中で,状況に適した生理活動の生起は生物の適応にとって不可欠である。しかしそれが長期化すると過度な負担となり,ストレス関連疾患などが生じる場合がある。そのような疾患には,免疫系が介在している。本講演では,臨床・生物学的な視点からストレスによる免疫系の調節メカニズムを解明した,木村先生ご自身の研究についてお話頂いた。
先生が行われた一連の3つの実験について伺った。1つ目は,ストレス状況がどの程度敏感に免疫細胞を調節するか検討した実験であった。実験の結果,ストレス課題を開始してから,血圧や心拍の増加と同様に2分程度で免疫細胞が増加した。2つ目は,行動と結果の随伴性の学習によって免疫細胞の増加が調節されるか否かを検討した実験であった。実験の結果,選択行動による結果のコントロールが不可能であった群に比べ,コントロール可能群では主観的なストレス感が低く,免疫細胞も増加した。さらに3つ目の実験で,行動結果のモニタリングを反映する脳波成分であるフィードバック関連電位と心拍変動を測定した結果,フィードバック電位の振幅と心拍変動の間に相関がみとめられた。これらの一連の実験により,免疫反応の調整を行う心臓迷走神経活動は,行動結果のモニタリングによって調節されていることが明らかになった。つまり,不確実な環境において,行動とその結果が相互関連することによって免疫系が調節されることが示された。
様々な実験手法と指標を用いて免疫系の調節メカニズムを解明された先生のご研究は興味深く,ご講演後には様々な領域の観点から活発な議論が交わされた。聴講者は17名であった。