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3月13日 西里静彦先生講演会「行動科学とデータ解析:嘆きと望み」

2012.2.28

組織的な大学院教育改革推進プログラムの一環として、下記の講演会を行います。ふるってご参加ください。

 日 時:3月13日(火) A.M.10:30~12:00 
 演 題:「行動科学とデータ解析:嘆きと望み」
 場 所:F号館 104教室
 概 要:
 私が学生時代の行動科学と現状を比べると、少なくともデータ解析に関しては雲泥の差がある。その進歩の影には、研究者の関心が、一次元から多次元に、線型から非線形に移ったことがあり、その関心の拡大に添う解析法も大きな進歩を見せた。行動科学の一般化は、問題設定を仮説検定的な問題から探索的研究へも進展させ、それに応じた研究法も進歩を見せた。かつてのデータ解析では、計算のチェックが必ず行われたのに、コンピューターが発展した今日では計算のチェックをする研究者が見当たらない。

 このように素晴らしい発展を遂げたデータ解析の歴史をみると、それから脱線したにもかかわらず、脱線のまま進んでいる車両が見受けられる。このような言明は、頭が古くなった「老兵のたわごと」かもしれないが、計算チェックの習慣が無くなった今日、誰かの指摘がなければ、見逃されるように思われる。そのたわごと、嘆きをここで披露したい。それが希望につながってくれれば何よりである。


データの姿を正しく表現するためにあえて次元を増やしてグラフを描き,そこから結果の解釈をすべきであるという,西里先生のご主張に基づいて執筆された論文を投稿したが受理されなかったというご経験についてもお話をいただいた。国際計量心理学会の会長や,学会誌Psychometrikaの編集長を務められた西里先生による論文であっても,現在の学界の趨勢が次元の縮約にあるが故に,それに反するような内容が受け容れられないのであろう。こうしたデータを正しく見るのを放棄し,とにかく次元を縮約するという昨今の潮流は先生の“嘆き”の一つであるのかもしれない。
 一方で,本講演を多くの社会科学や行動科学を志す若手の研究者・大学院生が聴講しているという事実もまた存在する。これからさらに何十年とかかるかもしれないが,西里先生の統計分析に対する考え―つまりは,データの姿を正しく表現するためにあえて次元を増やすことも厭わないという方針―に沿った新たな研究や成果が発表されることへの期待もまた示された。この期待こそが,西里先生の“望み”の一端であるのかもしれない。  (文責:箕浦有)

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